滑らかな表面を持つものが内部も柔らかいとは限らない。内に硬い瘤や鋭い棘を秘めていることもあるかもしれない。そしてそれらの瘤や棘は、私たちの知らないうちに成長し、突然その大きな姿を現すかもしれない。すべらかに磨かれた眞鍋アントンの彫刻は、木の持つあたたかさと柔らかい感触を見る者に感じさせる。自然の生命のもたらす豊かな素材がそのままに生かされている。しかし、生命の力はときに人間のコントロールを越える。木の中の瘤や棘もそのひとつである。眞鍋アントンは森の中に潜むそうした生命を見つめ、その力にかたちを与え続けている。

栃木県立美術館学芸員
杉村浩哉

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